新入社員は4月に入社すると色々な研修を受けることになります。中でも、外部から講師を招いて、ビジネスマナーなどの研修をしてもらうのですが、結構厳しい口調で新入社員にぶつかっていく方が少なくありません。日常生活でもなかなか罵倒はされませんが、平気で罵倒する講師も多く、それが普通とされています。
柴垣敏久さんは、こうした罵倒に何ら意味がないと考えるとともに、離職率のアップにつながると考えています。社員が講師であれば離職率のアップの責任はとれますが、外部講師に委ねるのは無理筋。柴垣敏久さんが考える研修講師のあり方を解説します。
外部講師は虎の威を借る狐
柴垣敏久さんは、外部講師は単なる虎の威を借る狐であると考えています。外部講師はプロ意識が高い人が多く、求められたオーダーに対応しようとし、あのような罵倒になるのです。いわば会社側ができない新入社員に叱責をするよう求めており、反発するような若手要注意人物にしなければならないと会社側は考えます。その状況をうまく利用しているのが外部講師です。
幸い柴垣敏久さんは、外部講師に食って掛かるようなことはしなかったそうですが、一緒に入った同期が食って掛かり、騒然とした雰囲気になったとのこと。その外部講師は女性で、よせばいいのに、その同期を論破しようとしてしまい、大人げない状況になって収拾がつかなくなったとか。柴垣敏久さんはそれを見て、外部講師はロクな人間ではなく、口先でどうにかなるものだと思ったそうです。
最近マナー講師が何かと批判を受けますが、マスコミに出るマナー講師はプロ意識が高いだけで、実際はテレビで見れるような荒々しい方は少ないのだとか。人間関係もしっかりしているからマナー講師になれるわけですが、サービス精神が余計な混乱を招いてしまい、マナー講師そのものの職業批判につながるのは、皮肉といえば皮肉です。
実際に柴垣敏久が講師をやってみてわかったこと
柴垣敏久さんは過去に研修の講師を担当したことがあるそうです。新入社員たちに対して、仕事の取り組み方を説明するような内容だったそうですが、実際に講師をやってみると、虎の威を借る狐だった講師の気持ちが痛いほどわかったのだとか。話をしていくと、新入社員の中にも眠そうにしてる人や集中力に欠ける人がおり、段々とイライラしてきたと言います。
かといって、100人が100人集中力を切らしておらず、そのほとんどは柴垣敏久さんの話に頷き、社会人としてあるべき姿を見せており、柴垣敏久さんはそれにも困惑したのだとか。自分だってこれほどのことはできないのに、今の若い人はもうできてしまうのかと驚いたそうです。思えば、柴垣敏久さん自身もこうした研修で集中力を欠くタイプだったので、若手へのイライラではなく、若い時の自分に対するイライラだったことに気付かされます。
柴垣敏久さんは1対多数で研修を行うのではなく、双方向で研修を行おうと考え、色々な意見を出してもらうことにしたそうです。ただ、ここで大きな失敗をしてしまいます。アドリブでそのようなことをした結果、予定の時間に収まらなかったのです。柴垣敏久さんはそのことで会社に怒られたそうで、それ以降講師の話は来ませんでした。時間内に研修を終わらせ、満足してもらうことの大変さを痛感したそうです。
外部講師はマウントをとったのか
近年、若い世代に限ったことではありませんが、マウントをとった、とられたと騒ぐ人がいます。マウントとは、総合格闘技で相手を寝っ転がらせた状態で攻撃を行う状態で、マウントをとれば相当有利、とられると致命的な不利を被るのです。しかし、マウントも単にとればいいのではなく、下手なことをすれば逆に反撃されるので、必ずしも有利ではなく、むしろ力のない人間がやると逆に痛い目を見ます。
近年のマナー講師批判、研修にやってきた外部講師への怒りは、彼ら彼女らにマウントをとられたという感覚に陥っているからだと柴垣敏久さんは考えます。確かに、マウントをとろうとしてきますし、その傾向はありますが、彼ら彼女らはビジネスマナーや仕事の取り組み方などを教える立場であり、教える立場=マウントをとる人間だとすれば、教師は全員マウントをとる人間になってしまいます。
柴垣敏久さんは、外部講師はやめて、社内で講師役となる人物を育てていくべきだと考えます。そうすれば、変なマウントにもならず、最大限マウントにならないような配慮もできるからです。当然会社側の要望もちゃんと聞けるので、アドリブをきかせることもできます。とはいえ、同じ仕事を依頼されても柴垣敏久さんはもう二度とやりたくないそうです。それだけ講師側もトラウマになりやすいのかもしれません。