柴垣敏久さんが過去に聞いた話で驚くことがあったそうです。それは取引先に出向いた際、たまたま就職活動をしていた学生がその会社に訪れており、面接の話題に。その時、取引先の担当者が質問の時に福利厚生の話をしたらどれだけ優秀でも採用しないと言ったのだとか。その理由を尋ねると、福利厚生にうるさいやつはその事ばかりを気にするから会社にとって厄介な存在になるというものだったそうです。
福利厚生における手当は充実させた方が当然よく、社員もそのあたりを重視します。しかし、どんな手当を求めているのか、手当がどのような意味を持つのかを考えて手当を設ける会社は意外と少ないかもしれません。意味のある手当とはどういうものか、柴垣敏久さんの考えをまとめました。
通勤手当にもちゃんと意味がある
本来通勤手当は必ずあるべきものではなく、法律でも通勤手当の義務付けはありません。本来は自己負担なのですが、それが成立するのは会社から徒歩5分ぐらい、自転車で10分ぐらいのところです。郊外に住む場合、毎月の交通費は相当なものになります。そこまでして通勤してくれる社員たちに対して通勤手当があるとともに、できるだけ公共交通機関を利用してほしいという意味合いがあります。
この通勤手当は非課税で年収にカウントされないため、できるだけ最短ルートではないルートを申告し、費用を浮かそうとする社員も出てきます。会社からすれば迷惑ですが、この程度でも社員は納得してくれるので、下手に手当を新設したり、昇給させたりするよりかは、この程度の遊びは問題はないだろうと柴垣敏久さんは考えます。そんな柴垣敏久さんは最短ルートで申請していますが、電車一本で行けてしまうところに住んでいるだけのことです。
ただ通勤手当に関して、実費ではなく1日いくらで渡した方がいいのではないかと柴垣敏久さんは考えます。これは年収を上げるためだけでなく、時に負担のない帰り方をしてもらい、少しでも通勤の疲れをとってもらうという狙いがあるからです。場所によっては在来線の特急で通えるケースもあるので、たまにはグリーン車で帰るということもできます。その中で酒でも飲みながら帰ってもらうなど、通勤の自由度を高めさせるという手があると柴垣敏久さんは考えます。
資格手当でやる気を促す
社員にはどんどん勉強して成長してもらいたいと管理職の方などは言いますが、給料をもらうために働いているサラリーマンが多いので、給料にならない勉強はあまりしたくないのが社員たちの本音です。裏を返せば、給料になる勉強であればいくらでもするのがサラリーマンなのです。もし本当に社員の成長を希望し、スキルを磨くことを奨励するのであれば、資格手当を設けるのが一番確実です。
不動産業界だと宅建を取得することで月々1万円、2万円ともらえるケースがあり、年間で相当な年収アップになります。複数の資格を持てばそれがどんどんプラスされていき、資格手当だけで5万も10万も月にもらえればそれだけで年間100万円分増えることになるわけです。これなら必死に勉強をするでしょうし、スキルアップにもつながります。本気でスキルアップを会社が求めるのであれば、最初にその本気度を会社側が示すべきであると柴垣敏久さんは考えます。
結局会社側はできる限りローコストでスキルの高い社員を育てようとします。そのため、資格手当に消極的な会社も存在するわけで、結局社員への還元を渋る会社と言えるでしょう。これでは忠誠心も何もあったものではありません。信頼されたければお金はしっかりと渡す、たったこれだけでいいのです。そんなことすらできないのが今の日本企業でないかと柴垣敏久さんは怒り気味に力説します。
ユニークな手当より真っ当な手当の増額を
柴垣敏久さんが様々な人と話をする中で、色々とユニークな手当があることを知りました。例えばスマホの会社では、勤続年数が一定期間を超えると数日間の休暇と旅行のお金をプレゼントするそうです。いわゆる永年勤続表彰というやつですが、長く会社にいて欲しいという会社側の強いメッセージと言えます。確かにこういうのもいいかもしれませんが、日々働く社員に報いるような制度の方が良く、実はこの方が安上がりなのです。
例えば、5年働いて10万円が与えられる会社があったとします。年間にすれば2万円、月々にすれば1600円程度です。資格手当の制度を設け、1万円を与えたとすれば、年間で12万円、5年で60万と6倍も違います。ユニークな制度は本来設けるべき真っ当な手当を隠し、ワクワク感をローコストで出そうとしているだけなのです。だったら、真っ当な手当の増額の方が本気度が出るのではないかと柴垣敏久さんは考えます。